弁護士の平均年収
弁護士の平均年収に興味がある方のための基礎知識
弁護士の年収まとめ
平均年収 | 1028万円 |
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開業弁護士の年収 | 250万円~3600万円 |
勤務弁護士の年収 | 900万円~ |
アイミ
実は法律の範囲は幅広く、六法全書で有名な憲法、商法、民法、刑法、刑事訴訟法、民事訴訟法の主要な6法律から、知的財産権法、産業法など非常に多岐にわたっています。
この膨大な内容を一人の弁護士が全てをカバーすることは非常に難しいので、それぞれ専門分野を持っているのが普通です。
特に弁護士への依頼者が多い分野は民法、刑法ですので、この分野に詳しいことを売りにしていることが多いです。
また、悪徳商法という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、悪徳商法に強い弁護士、などと言うようにマルチ商法や詐欺などを対象に仕事をする弁護士もいます。
弁護士全体の平均年収
弁護士の年収の平均額は「1028万円」(賃金構造基本統計調査)
さらに129職種で行われた職業別年収ランキングでは、弁護士が5位でした。
開業弁護士と勤務弁護士の年収差
弁護士の平均年収は「1028万円」でしたがそれでは開業弁護士と勤務弁護士だとどのくらい年収差があるのでしょうか。
開業弁護士だけの年収データはありませんが、年収査定で得たデータと弁護士白書のデータを掛け合わせてみるとだいたいの予想ができます。
約2500人の弁護士をもとに取得した平均所得と掛け合わせみるとだいたい平均は1500万円~2000万円程度となっています。
全体の40%ほどが年収2000万円をこえる結果になりました。
年収 | 人数 |
年収1億 | 53人 |
年収7500万円~1億未満 | 42人 |
5000万円~7500万円 | 136人 |
3000万円~5000万円 | 295人 |
2000万円~3000万円 | 347人 |
弁護士の勤続歴による年収
弁護士の平均年収について法務省がデータを算出していました。
1年目はやはり大企業の新卒と同じくらいのレベルの年収にありますが、
15年勤務(40歳前後)になると平均年収は1500万円をこえるようです。
勤続年数 | 年収 |
1年目 | 327万円 |
6年目 | 765万円 |
15年目 | 1,285万円 |
弁護士の年収と弁護士の人数推移
弁護士は30年程前では高額納税者の常連となっており、世間では医師と共に高給取りのイメージがありました。
しかし、近年では弁護士になってみたはいいが、思った以上に給料が安いとぼやく若手弁護士は少なくありません。
これは一体どういうことでしょうか?近年の弁護士の動向について見ながら説明いたします。まずは、下のグラフをご覧ください。
1980年には1万人ちょっとであった弁護士数が2017年には4万人近くまで増えています。
特に、2000年を過ぎたころから急激に上昇していることがわかります。これは2002年に司法試験法が改正されて2006年から新しい試験になり、司法試験合格者数が激増したためです。
それまでは司法試験は最難関の国家資格などと呼ばれていて、大学を出た後に試験を受けても何年間も合格できないと言った話は沢山ありました。しかし、現在では司法試験の合格率は20%を超えており、年によっては40%を超えることもあります。このため、以前のような難関な資格とは言い難い状況になっています。
弁護士数が増えると当然の如く弁護士間の競争が激しくなり、収入も低くなっていきました。
実際に、1997年の民事訴訟数を調べてみると146,588件ありましたが、2017年の民事訴訟数は146,678件と、20年間で多少の波はありますがほぼ変わっていません。
この間の弁護士数は2倍以上増えていますので、単純に考えると弁護士全体の平均年収は1997年と比較して2017年には半分になっていると考えられます。
では、実際に収入はどのように変化していったかと言うと、日弁連の調査結果から、以下の通り弁護士の所得は下落の一途をたどっています。収入から活動費等を除いた金額が所得になります。大体収入の40%程度が弁護士の所得になっていることがわかります。
2006年には弁護士の年収の平均値が1748万円であったのですが、2018年の段階では959万円とほぼ半分になっています。
この傾向は、2006年に始まった新しい司法試験で弁護士数が増えたことと一致しています。
また、将来的な弁護士の収入ですが、日本は人口減少が始まっていますので素直に考えれば訴訟数は減少傾向なると思われますが、一方で弁護士の数は減るどころか増加すると思われますので、弁護士一人当たりの収入はさらに低下すると思われます。
データからは特に2000年代に入って弁護士数は増加していることがネックになっている様子が見えてきます。
20世紀中に弁護士資格を取得した方々ですが、徐々に引退を迎えています。
しかし、元々数が少ないので引退しても弁護士の総数にはそれほど影響しません。
一方で、2000年以降に弁護士になった方々は数が多い上にまだまだ現役を続けます。
この世代が引退をしないと弁護士数は減少しませんが、引退は何十年も先です。
さらに、若い世代が流入し続けますので、将来的には弁護士の数が増え続ける上に日本の人口が減るので弁護士業界はさらに過激な競争になると思われます。
弁護士経験年数ごとの年収
次に経験年数ごとの所得を見てみましょう。下のグラフは日弁連が調査した経験年数と所得の関係の結果です。
所得のピークは経験年数15年から35年にかけての間に見られています。一目瞭然なのが、2008年から2014年にかけてどの階級でも急激な所得の落ち込みが見られています。
新しい司法試験制度になり弁護士数が急増している時期です。
この期間にもう弁護士は食えない職業、というイメージが徐々に世間に出てきました。実際に収入の落ち込みが激しく、5年未満の駆け出しの弁護士の所得の平均は500万円以下となってしまいました。
これは大企業のサラリーマンと同程度の収入であり、一人前の弁護士として一線で活躍する経験年数10年以上でも1,000万円ちょっとの所得となっています。
一方で、2008年の段階では経験年数が15年を超えると平均所得は2,000万円を余裕で超えており、高収入が得られる上に社会的地位も良い夢のある仕事でした。
ヨシコ
大きな弁護士事務所に雇われていると、サラリーマンですので年収は高くはありませんが、毎月安定した給料と社会保障が得られます。
個人事務所を開設すると個人事業主になり、雇う側になりますので個人の力量次第で収入は大きく上下します。
中には年間の所得が1億円を超えている弁護士もいますが、個人事務所を開設し、規模を大きくした結果であると考えられます。
気になる弁護士の費用
弁護士に相談する場合は30分毎に5,000円がかかることは一般的に知られていますが、こちらは法律で決まっている金額です。
弁護士事務所によっては相談する内容次第では相談無料という場合もあります。
弁護士に相談した結果、依頼となった場合にはまずは着手金を支払わなければなりません。
この費用を支払うと弁護士が仕事に取り掛かります。着手金の金額は事件の種類や難易度、金銭が絡む訴訟ならば金額の何%などと決まっています。
着手金額は弁護士事務所により異なりますが、訴訟の場合は最低額が30万円程度で交渉や調停の場合は10万円程度が一般的です。
訴訟の際には弁護士が法廷に立つと、その分費用が発生します。
費用は拘束時間により異なり、一般的には15,000円から終日拘束されると50,000円程度となります。
日帰りできる距離ではなく、出張となれば出張費用も支払わなければなりません。また、裁判が終わると報酬を支払います。
報酬は勝ち取った金額の何%など事務所により異なりますが、一例として3億円以下なら6%などとなっています。
離婚訴訟の場合は着手金が大体30万円程度、報酬金も大体30万円程度となりますが、慰謝料など金銭が絡むと金額の何%となります。
以上が民事に関してですが、刑事事件に関しては金銭が絡まないので着手金と報酬金は大体30万円程度で、あとは弁護士が法廷に立つ際の日当が必要になります。
ここから分かるように刑事事件はあまり儲かりません。弁護士として実入りのいい依頼とは民事で多額の損害賠償金を請求する案件となります。
債務整理ですが、一時期過払い金のという言葉をよく聞きました。
グレーゾーンやグレー金利などと呼ばれていた時代に消費者金融などからこの金利でお金を借りた場合は過払い金が発生しており、金融機関に返還を要求できますが、この過払い金の返還を行う弁護士もいます。
この場合、返還金額の20%程度が弁護士への報酬となります。
他にも自己破産を依頼した場合には着手金が30万円程度必要となりますが、自己破産の場合は自己破産に成功しても報酬金は発生しません。
ただし、自己破産を行う場合には同時廃止手続きや少額管財手続きに応じて申し立て費用が別途必要になります。
仕事内容 | 弁護士費用 |
相談30分 | 5000円 |
着手金 | 30万円~ |
弁護士が法廷に立つ | 1.5円~5万円 |
離婚訴訟 | 30万円~ |
誹謗中傷訴訟 | 15万円~ |
債務整理 | 返還金額の20%程度 |
ヨシコ
例えば依頼の多い案件に交通事故があります。
ドライバー側は大抵任意保険に入っていて、事故後に保険会社が被害者に損害賠償額を提示しますが、この時被害者側が賠償金を不服として裁判を起こすことがあります。
交通事故は歳により異なりますが、年間40万件程度発生していますので、弁護士数を4万人とすると弁護士1人当たり10件の事故が起きています。
もちろん、全ての事故が訴訟となるわけではないのですが、それでも弁護士の仕事としては多いです。
離婚訴訟や破産手続きなども弁護士の収入減になります。
現在、年間約60万組が役所に婚姻届けを提出していますが、約20万組が離婚届けを提出しています。円満に離婚できれば弁護士はいらないのですが、円満に離婚できる関係ならばそもそも離婚までは至らないことが多いので、残念ながら離婚には紛争が伴う場合が多いです。慰謝料をいくらにするか親権、財産分与などで揉めますので、弁護士の出番になります。
企業の顧問弁護士になれば毎月企業から顧問料が支払われますので、安定した収入源になります。
儲からないとよく聞くのが国選弁護人です。
国から依頼があり弁護士費用は国から支払われますが、この額は決まっており他の事件の弁護と比べると安くなっています。
このように弁護士にも様々な仕事があります。
弁護士になる方法は?
弁護士を目指すにあたって定番コースとなるのが「法科大学院への進学」です。
法学の知識がなくとも大学受験に合格して3年間学び、修了することで新司法試験の受験資格が受けられます。
新司法試験にも合格すると、司法修習が1年間あります。
司法修習も終えて試験に受かれば、弁護士として働くことができます。
ヨシコ
【弁護士の魅力】弁護士の仕事はおもしろい?
弁護士と聞くと頭がいい、法的に強い、社会的にも頼りになる存在など、周りが羨む印象があります。
弁護士の口コミをチェックすると、仕事はハードでも依頼者からの依頼を解決するのはやりがいがある、達成感があると回答している人も少なくありません。
流石に扱っている案件がトラブルや訴訟なので、面白いとは堂々と発言しづらいでしょうが、やりがいを感じている人は多く見られました。
ヨシコ
他にも世の中の正義のために悪事を暴き弱者のために働く、など夢を持ってなる職業でもありますが、実際のところは交通事故や離婚訴訟などが大きな収入源となりますので、現実としては金銭欲や憎悪、暴力性など人間のネガティブな部分を見ながら仕事をすることになります。
平均年収.jp編集部
外資系出身者・職業紹介本原作者、FP資格保有者・専門ライター、キャリアコンサルタント・大手出版編集者などのメンバーが参画
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